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竹島水族館スタッフブログ

VS イソギンチャク長編 ①から⑦


なんでも限度を超すと困るものである。

サンゴの水槽に蛍光グリーンの小さなイソギンチャクが増え始めて、初めのうちは「おー、かわいいしまぁキレイっちゃあキレイだからいいか」と思っていたのですが、次第にテキは調子に乗ってきて気づいたころには大量発生というゾーンに突入してしまい、取り返しがつかなくなり困ったのです。

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少ししかないときは逆に自然っぽくてイイ感じ♪だったのですが、油断していたらバクハツ的に殖えて、岩という岩に咲き乱れる緑の小花のようになり本命のサンゴたちの快適な暮らしを阻害するようになったのです。こうなるともう担当飼育者からしたら敵意しかなくなる。おのれ。

調べてみると「スズナリイソギンチャク」というカワイイ名前のやつであることがわかりました。同時に同じように困っている水族館(いつも交流していて仲良し~だと勝手に思っている~鳥羽水族館さん)があることもわかりました。
サンゴ水槽に発生する本命でないイソギンチャクはよく「セイタカイソギンチャク」というのがとても困らせることが有名で、これは「ペパーミントシュリンプ」という赤色の小柄なエビが食べて駆除してくれることが知られています。よく働きます。イソギンチャク駆除の名人で生物兵器です。

今回もこのエビを数匹水槽内に入れて「おーし、働いてくれよ」と言ったのですが、彼らはすかさず岩陰に隠れてスズナリイソギンチャクを食べません「おい、予定が違うじゃないか」というと「わてら、このタイプのイソギンチャクは専門外なので無理っすわ。じゃあね。」と言い、岩陰に隠れて退治に超消極的な態度を見せました。おのれ。裏切り者め。

もう少し調べてみると「ウミフクロウ」というウミウシの仲間が食べてくれるということが判明(鳥羽水族館さんのブログに書いてあった)しました。すかさずその場から電話の子機を取りイズチューのイーダさんへ電話して「ウミフクロウ発注!今すぐ!」と言うとイーダさんは「あー、はい!もうすぐシーズンになると思うので大丈夫っすよ!」と力強く答えてくれました。「どうしましょ?20~30匹くらいいりますか!?」「いや、10匹で良いです」
やれやれ、これで一件落着だぜ。
しかし待てど暮らせど「ウミフクロウがきました!」という連絡はなく「ハワイ便が入りました!ちょっと値段が高いけど!」とか「クラゲはどうすか!?」という嬉しそうな声での連絡しか来ない。おのれ。

もう少し調べてみると「ハタタテダイ」という魚が結構食べるのではないか?ということが判明(鳥羽水族館さんのブログに書いてあった)。すかさずその場から電話の子機を取ってイズチューのイーダさんに電話「おなかをすかせたハタタテダイを!」「アイヨォー!」といって今度はすぐにハタタテダイが届きました。イーダさんの頭の中にはすでに竹島水族館ウミフクロウが欲しい、というメモは海水にとろけて流出したようでした。
しかし食わんのだ!ハタタテダイはスズナリイソギンチャクに見向きもせず次第に痩せ細ってきた。仕方がないので普通のエサをあげると「コレコレ!ワシこれに目がないねん!うひゃひゃっ!!」といってバクバク食べてイソギンチャク退治なんてもってのほかですわ。と言って毎日鼻歌を歌っている。おのれ。

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思えば初めからそうすればよかったのですが、鳥羽水族館の飼育員である師匠に連絡して駆除方法を聞きました。「ウチでは塩を振って少しひるんだところをホースで吸いだしています」ということなので、なーんだ、塩ならいっぱいあるぞ。ということで実施。しかしなかなかうまくいかない。テキも必死である。攻防が続き、ボクが根気負けした。ちくしょう。

岩ごと熱湯に浸けて壊滅作戦を考えた。しかし岩には目に見えない微生物(水をキレイにしてくれる)や小さなエビカニ、ゴカイ、貝など多くの生き物が暮らしています。これらもろとも熱死させるなんてひどいことはワタシ、できない。

こうなったら使いたくないけど薬品なのだ。こうしている間にどんどん増えて水槽はほとんどスズナリイソギンチャクに占領されて緑の草原のようになりつつあった。
迷惑イソギンチャク駆除剤というのがあるのでこれを使用。薬をスポイトで吸い取ってスズナリイソギンチャクの口元に振りかけていきます。すると「いやん、どうしてそういうことするの。ちょっと、ダメよ」と言ってイソギンチャクは口を閉じて嫌がりました。無視して「ふっふっふ、そおれ、そおれ~」と薬をドバドバかけていきます。なにか嫌がる町娘をいぢめる悪代官の気持ち。「あ、あ、あ、やめて」「よいではないか、よいではないか」
閉館後に一人でこんなことをやっているのはさみしくなる。

しかし、翌日、水槽を見てみるとスズナリイソギンチャクはケロリとした顔をしてお花を開いて水流に元気よく揺れている。「あれれ、話が違うじゃないですか」「ふっふっふ、よくもいじめたな!覚えておれ!もっと増えちゃうぞ!」「よして!よしてくだせぇ!お代官様!ご勘弁を!」立場が逆になった。

駆除剤は前述の「セイタカイソギンチャク」には非常に大きな効果を示すが「スズナリイソギンチャク」にはあまり効かないようであった。おのれ。
しかもこの薬品、僕が閉館後の水族館の薄暗い中で狂乱的に大量使用したことにより本来の本命サンゴたちに大きな影響が出てしまった(サンゴもイソギンチャクの仲間のようなものなので)ようで、急速に本命のサンゴたちも弱ってしまいました。同時に飼育者のボクもテンションが落ち弱る。サンゴと一緒に「もうアタシだめみたい」とうつむき、早く帰って1週間くらい寝てしまいたくなりました。

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しかし諦めないのである。もう怒った。許さないんだから。
僕は水槽から岩を取り出して、スズナリイソギンチャクを1つずつ爪でこそぎ落していく作戦を実行しました。すると「わ!わ!なんてことするんだ!それはダメだ!やめて!すみません!」といってイソギンチャクは岩からこそげ落とされるのです!

しかしイソギンチャクは無数に水槽内にはびこっている。1つずつ爪でこそげ落としていたのですが20個くらいやった時にすでにもう10個くらいやったら爪がけずれて無くなりそうな予感がしてきた。なにかいい方法はないか。。。
道具部屋に行き、なにかいい材料を探しました。こういう時に適当な使えそうな道具がその辺に転がっているのですが、最近は整理整頓!美しいのはスバラシイ!と後輩たちが張り切ってドンドン片付けて整理してしまったので、道具部屋はとてもキレイで何も適当なものが転がっていない。
それでもその中を這いつくばりゼーゼーと荒い息で7センチのネジクギを見つけて、これで岩をえぐるようにイソギンチャクの除去をしました。あいかわらず1個ずつなのでチマチマ時間はかかるもののなかなかスムーズにイソギンチャクをこそげ落とすことができます。「おらあ!取れろ取れろー!」

で、いまはこの地点。現在2日目。ひたすらクギでイソギンチャクをこそげ落としています。疲れた。ブログ書くのも疲れた。もーやだ。
数百単位でどんどん岩から朝からスズナリイソギンチャクをこそげ落としています。
奇麗なサンゴのお花畑の復活にむけて地道なタタカイは続きます。




by takesuiblog | 2022-01-17 11:41 | こばやし館長
たけすいの飼育展示スタッフのヨロコビとカナシミと愛しさと切なさとあれとこれと

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