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竹島水族館スタッフブログ

そしてなんと!の魚が産まれました!

すごい久しぶりのブログです。
最近はとある状況下により足の裏に多大なる汗をかく人になったり、無意識に耳を掻きむしり傷ついて痛くなったり、アイスクリームばかり食べたくなったり、副館長も耳が痛くなり聞こえづらくなったり、理事長もその場所の近くを通るだけでジンマシンが出たりするとか大変です。悲しいです。

コロナもおさまりませんし、いじけて展示裏で小魚をチマチマ繁殖させて眺めては癒されていたのですが、そんなことばかりやっていては変態レベルが上がるだけでイカン!ということで、ずっと前から取り組んでいたことに力を入れて、そしてなんとうまくいき成功しました。何かというと、


「展示エリア内でディスカスが繁殖しました!」


はい。ディスカスって何?っと言いますと、マラカスではなく、バカボケカスでもなく、アマゾンに住む熱帯魚です。熱帯魚の王様と言われている魚です。ディスカスとは円盤という意味でその通り丸い体形をしています。フリスビーみたいに投げたらアジとかマグロよりも遠くに飛んでいきそうな形をしていますが、生き物なので投げてはいけません。

このディスカスという魚は子育てをすることが特徴です。そしてなんと体からミルク(のようなもの)を出して子育てします。そしてなんとオスもミルクを出します。そしてなんとすごい臆病な魚です。そしてなんと飼育も気難しい魚です。そしなんとそのような理由から展示している水族館は少ないです。そしてなんと今回それを展示してカップルを誕生させて、そしてなんと展示水槽内で繁殖しました。

突如として「そしてなんと」のオンパレードになったのですが、そもそもボクは小学校3年生で熱帯魚を飼い始め小学校5年生でこの魚に出会いました(中3でサンゴ飼育に手を出した超水族館エリート戦士なのだ)。
ディスカスに出会ったのは市内の駅前の果物屋さんでした。果物屋さんの店内の片隅で丸いきれいな魚(ディスカスね)が泳いでおり、その体に小さな魚が無数にまとわりついている感動的子育て光景は今も覚えています。当時は卵ではなく子供を産む魚「グッピー」にコーフンし驚愕していた少年のボクはさらに、こんな魚がいるのだ!と即座にコーフン倍増し欲しくなり、自分の家の水槽でもこの子育て光景を見てみたくて小遣いをはたいて買ったのですが、少年には難しい魚なので何度も失敗しました。

魚ばかり眺めており勉強しないので親に怒られ、でも勉強しないのでそしてなんと親はそのうち怒るのを諦めました。そしてなんとやがて中学生の時に繁殖に成功しました、そしてなんと当時はブームだったので熱帯魚屋さんが繁殖した子供を引き取ってくれて多大なるお小遣いが手元に入り中学生にしてはなかなかのマネーを手にしました。そしてなんと親はちょっと応援し始めボクは飼育のためにかかる電気代を余裕で親に払い始めました。

水族館に就職してこのディスカスの感動的子育てをお客さんに見てもらいたい、特に子育て中のママたちに見てもらいたいなぁと思っていました。しかし、ものすごく臆病で水質に敏感などの原因で真っ黒になり水槽の隅に固まって出て来ない、ということばかりで繁殖はおろか展示すら成り立たない状態でした。
そこで、エエィ!と声をあげて

①環境対応力のある子どものディスカスを仕入れる。
②臆病なのでたくさんの数で買う(15匹飼いました)たくさん飼って環境的に安心させる。
③水槽や展示場所を移動させずにそこで育てる。多少厳しく育てる。約1年。
④ペア(カップル)を誕生させる。
⑤ペアのみの水槽に隔離して繁殖モード。

の1年以上の5段階飼育展示をして今回、成功したのですが、⑤ペアのみ水槽にしてから何度も産卵はしたのですが、何度も失敗(親が警戒して産んだ卵を食べてしまう:子育て魚の水槽内繁殖ではよくあること)しました。中学生のあの頃も産卵するとコーフンして観察しすぎて親が警戒してしまい失敗したことが何度もありました。新聞紙で水槽を覆って見えなくしてやったり、水槽の下にゴム板を敷いて振動が水槽に伝わらないようにしたこともありました。週末は野を越え山を越え自転車で1時間半ほどかけて熱帯魚屋さんやマニアの方のところに行って何度もポイントやコツを聞いて勉強しましたね、学校の勉強もそれくらいやればもっと優等生になったのになぁ。

今回は産卵しても失敗が7回ありました。やっぱりお客さんがのぞいたり場合によっては水槽を叩かれたりするので無理かなと思って、そのたびにもう裏の水槽に移動して静かな場所で繁殖させてあげたいなあと思いましたが、目的は繁殖をお客さんに見てもらうためなので、頑張れ、頑張れ、この環境に慣れるんだ!怖くないぞ!やればできるぞ!と水質やエサを調整して、水槽に「そっと見てあげてね!」と表示をしたりして踏ん張りました。

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体に小さな赤ちゃんが一緒に泳いでいるのがわかりますか?

産卵すると両親は胸鰭で新鮮な水を卵に送って無精卵などは口で取り除きます。
3日ほどで産まれると赤ちゃんはすぐには泳ぎ出さないので親は口を使って赤ちゃんを別の安全な場所に移動させることが多いです。
さらに3日ほどで赤ちゃんは泳ぎ始め親の体についてミルクを食べ始めます。
ミルクを食べ始めると四六時中赤ちゃんにつつかれるのでミルク分泌も伴って親の体は黒くなり表面が荒れ始めます。

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8回目の産卵で成功。人も魚も慣れるもんです。繁殖成功。赤ちゃんを体に引き連れて泳いでいます。
あまり見ると「見るんじゃねぇ!」と少し怒ってきたり、奥の方に逃げたりします。
水槽に手を入れると警戒して赤ちゃんを食べてしまうおそれがあるため、ちょっとガラス面に苔が生えていますが、観察可能です。そっと見てあげてください。まったりうむにて展示中です。




by takesuiblog | 2021-09-04 11:37 | こばやし館長
たけすいの飼育展示スタッフのヨロコビとカナシミと愛しさと切なさとあれとこれと

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